イミテーションゲーム 感想

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第二次大戦時、ドイツ軍の猛攻に劣勢を強いられた連合軍は、打開策として敵の暗号機エニグマの解読にのりだすことになる。
そのために、イギリスは国中からあらゆる分野の天才たちを選別し、ロンドン郊外の軍施設に集め、解読に当たらせた。
数学の天才である主人公アラン・チューリングもその一人として、史上最強の暗号機エニグマの解読に挑戦するが、事態は困難を極めた。
他のメンバーが皆で協力し、何千もある暗号の組み合わせパターンをしらみつぶしに解読しようと試みるが、アランは「機械を打ち負かすのは機械だ」とエニグマに対向する暗号解読機を作ろうとする。
ただただ自分の世界に没頭し、メンバーとはまともにコミニケーションを取ろうとせず、次第に彼は孤立していくこととなる。
自分のやり方が正しいと頑なに信じ、メンバーにもそう訴えかけようとするが、アランは自分の考えを説明するのが得意ではなかった。
そんな彼の姿は、納得させるだけの説明もろくにせず、ただ自分の言うとおりにすればいい、という風に見え、メンバーは当然受け入れてはくれなかった。
仕方なく、アランは会話による説得を省き、無理やり、自分を解読メンバーのリーダーにして言うことを聞かせることを選んでしまう。
これによりアランはさらに孤立していくことになる。
彼に対する鬱憤、一向に進まないエニグマ解読のもどかしさ、苛立ち。
様々な負の感情が入り混じっていく。
アランもまた軍の将校からの解読の催促に、焦りを隠せずにはいられなかった。
そんな中、解読メンバーの補充として登場したヒロイン、ジョアン・クラークとの交流により、アランは他者との会話がいかに大切かに気付かされる。
不満を抱えていたメンバーに真摯に向かい合い、慣れないジョークなどでどうにかコミニケーションを取ろうとしていく。
そんな彼の態度にメンバーも徐々に心を開き、彼の暗号解読機の制作に協力するようになっていった。
こうして、アランは暗号解読機「クリストファー」を完成させ、エニグマを見事解読することとなる。

イミテーションゲームはこの大まかな本筋で流れていくが、その合間ではアランの幼少期、そしてエニグマ解読後のアランも描かれている。
幼少期からアランは変わり者と蔑まれ、同級生からイジメを受ける。だが、親友であるクリストファーだけはそんな変わり者の彼を受け入れてくれる。
やがてアランはクリストファーに友情を超えた愛情を抱き始める。
しかし、夏休み前での語らいを最後にアランとクリストファーは永遠の別れを迎えてしまうのだった。
一方、エニグマ解読後のアランはひとり「クリストファー」の開発を続けていた。
エニグマについては軍の最高機密として口外を禁止され、彼が成した偉業は当然、秘密とされてしまう。
そんな中、彼の家に強盗が入り、警察に通報が入る。
担当の刑事ノックはあまり事件に協力的ではないアランに何か裏があるのではないかと、彼のことを調査し始める。
だが、彼の情報はあらゆる機関から完全に消されており、ノックは国を動かすような大きな事案をアランは秘めていると確信する。
だが、蓋を開いてみれば、彼の身辺を調べて出てきたものは同性愛者である真実だけであった。
当時、イギリスでは同性愛は罪であり、アランは警察に捕まることとなってしまった。
だがノックはその真実に納得できず、彼に尋問を始める。
こうして、彼の口からエニグマ解読について語られることとなる。

 

 幼少期、エニグマ解読、解読後、この三つの時系列が重なりあうことで、アラン・チューリングという男の生涯が語られることとなる。
そこには彼にしか分からない苦悩が随所に埋め込まれている。
同性愛者という世間から受け入れがたい真実を腹の裏に抱えている。
この真実が大切な人を傷つけるのではないか。常に苦悩がつきまとう。
彼は何より孤独を恐れていた。
幼少期に失った最愛の人クリストファーがその要因を作ったと言っていい。
だからこそ、彼は終戦後も「クリストファー」を開発し続けた。
暗号解読機としてではなく、魂をもったクリストファーという人間を機械として再構築することを望んだのだ。
現代では人工知能と呼ばれる分野のまさに開拓者である。
クリストファーへの愛情が彼を突き動かしていく。
しかし、彼の愛は当時のイギリスでは到底、受け入れられるものではなかった。
作中でもアランのような同性愛者を刑事たちは汚らしいと評しているシーンがある。それが何よりも当時のイギリスを物語っている。
彼はイギリスの法律で罪に問われてしまう。
職を追われ、ホルモン注射による強制的な去勢を行われる。
体は後遺症により震えが止まらない。
それでも彼はクリストファーを愛し、自分からクリストファーを奪わないでくれと涙する。
それまでの作中、決して感情的になることのなかったアランが唯一、心の底から泣き叫ぶ瞬間でもあった。
翌年、アランは苦悩の末、自殺してしまう。
アランが残した「クリストファー」は現代におけるコンピューターの基礎となり現代も息づいている。
だが、その真実は長い間、イギリスの闇の中に眠っていた。
彼の偉業は同時にイギリスの差別の歴史でもあったからだ。
「誰も想像しなかった人物が想像できない偉業を成し遂げる」
幼少期、変人として周囲から虐められていたアランにクリストファーが告げた言葉だ。
彼はそれを生涯、抱えて生きてきた。
イギリス社会から汚らわしいとまで言われてしまう同性愛者が未来ではコンピューターの基礎を作り上げた偉人として語り継がれている。
当時の人々はそのような夢物語を決して想像しなかっただろう。
世間に迎合することなく、自分の信じた道を実直に進んでいく。壮大な夢を抱えながら、世間から理解されずとも努力を惜しまない。
ただ理解し難いという理由で、こうした人々に異端者という烙印を押すのは間違っている。
多様な可能性を探り、より理解しようと努めていく事こそ、より良い世界を作り上げていくのに必要なことなのだというメッセージが、このイミテーションゲーム、しいてはアラン・チューリングの生き方に込められているのではないかと私は思う。


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