エル・リシツキー

 ロシア革命期、当時のロシアの識字率は低く、そのために言語そのものを視覚表現によって伝えることを求められた傾向にある。
そういった特性をもって生まれたロシア・アヴァンギャルドという芸術運動を代表する作家として、やはり一番に思いつくのはエル・リシツキーである。
彼を語る上で欠かせないものが詩人マヤコフスキーと共同編集し作り上げた「声のために」という書籍である。

 

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この書籍は文字の読めない人に対しても、見るという行為を通して、直感的にそこにあるものを理解させることを理念に制作されたものであり、現在の視覚言語という概念を作りだした。
また書籍として初めてインデックスシステムを導入したことも有名な話である。
この書籍は後世に多大な影響を与える。
まさに革新そのものであった。

 エル・リシツキーは「見る」という行為に長けた人物である。
当時のロシアでの識字率の低さは、つまるところ就学率の低さに起因する。国がそういった教育などの法整備をする余裕が、その当時になかったこともあるだろう。
つまるところ、文字を学べる者は暮らしに余裕のある裕福層だけである。
そういった背景とその頃の世間に渦巻いていた平等な社会を築こうとする動きをエル・リシツキーはしっかりと見ていた。
だからこそ、一般大衆に対しても、視覚言語を利用し、平等に理解が可能な「声のために」を制作したのではないかと私は思う。
自分を取り巻く環境を観察し、それにもっとも望ましい答えを導き出す。
まさに「見る」という思想である。

 人に伝えるためにはどうすればいいか。
それが現代デザインの原点であると私は考えている。
伝えるべき対象をどのように見つめるのか、どのように見るべきなのか、伝えるべき対象と自分との関係性を明白にし、そこからどのように見せるべきか、ということを導き出していく。
この一連の過程こそ、エル・リシツキーの思想を体現している。
それほどまでにエル・リシツキーが現代に残した「革新」は現代デザインに深く根付いてる。
そしてこれからも、それは生き続けていくことだろう。

 

 


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