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ヤン・チヒョルト ニュータイポグラフィー

 アートディレクター 佐野研二郎氏がオリンピックエンブレムでの盗作疑惑は記憶に新しいと思います。彼の案がリエージュのエンブレムに酷似するということから、彼の昔の仕事の不手際にまで波が広がり、最終的にエンブレム撤回となる散々な顛末でした。

そもそも、最初に選ばれた原案が私達に公開されたものを改変したものである時点で色々と突っ込みどころ満載なわけですが、そんな「原案」が公開され、話題になった人物がいます。

デザインをしている人間なら知らないはずのない人物。

それこそがヤン・チヒョルトです

 

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この人の名前を検索すると佐野研二郎氏の盗作疑惑云々※1の面白くもない記事ばかりが出てくるので、ここで少しヤン・チヒョルトご本人のお話を書こうと思います

 

1928年にヤン・チヒョルトによって提唱された「ニュータイポグラフィー」は一枚の印刷物から、雑誌、書籍にいたるまで、すべての印刷物に対応するタイポグラフィーの原則を定めようとするものである。この考えは当時のドイツを中心に世界中に広まっていくことになる。

ヤン・チヒョルトはレタリング職人の父をもち、幼い頃から文字と触れ合っていた。やがて銅版画や製本技術、カリグラフィーなどを学び、ドイツで教鞭をとるようになる。

そんな彼に影響を与えたのがエル・リシツキーの構成主義であった。特にエル・リシツキーとマヤコフスキーの合作である詩集「声のために」の抽象的な形と文字の美しいバランスで作られたコミュニケーション手段は彼に衝撃を与えた。それが彼の中で「ニュータイポグラフィー」を生む要因となったのである。

 

banira11aisukuriimu.hatenadiary.jp

 

ニュータイポグラフィーの原理はいくつか上げられる。

ニュータイポグラフィーの本質は明快であること。中軸構成の原則の破棄。伝達の目的を強調し、論理的に活字の大きさやウエイト、色、写真などを要いて明快な表現にすること。

アシンメトリーにし、機能的でありながらリズム感を生み出す。色彩は装飾的に要いるのではなく機能的に要いる。背景は文字やフォルムは同じ価値の構成要素と考える。書体はサンセリフを基本とし、グロテスク、カーベル、フーツラ、ローマン、エジプシャンなどを用いる。

こうしたニュータイポグラフィーの考えは欧米など多方面のデザイナーに大きな影響を与え、現代にも深く根付いている。

彼を語る上で、もっとも重要なサボン(SABON)という書体がある。

 

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作られたのは1960年代。凸版印刷からオフセット印刷へ、そして金属活字から写真活字へと移行していく時代だった。しかし、機械組みは優れた手組みによる植字法には到達することが出来ず、長らく手作業が模範とされてきたなかで、機械組みに高い水準のものを求められることはなかった。正しく組まれた語は、すべてのタイポグラフィの出発点である。ニュータイポグラフィーの考えにのっとり、ヤン・チヒョルトは手組み、機械組み、どちらでも同一の品質を維持でき、写植にも適応するローマン体を設計した。それがサボン(SABON)である。彼がサボンを作る上で参考にしたものはギャラモンの活字であった。ギャラモンの活字に大きく関わったヤコブ・サボンの名前から命名されたサボンは20世紀を代表するローマン体として大きな評価を得ることとなった。

良い文字のデザインはデザインしたことに目がつかず、読みやすい。

当たり前に思うかもしれないその思想こそ、ヤン・チヒョルトが現代に残した最大にして偉大な功績なのである。

 

 

 

※1 2013年にgggで開催されたヤン・チヒョルト展のマークと佐野氏が選考にだしたエンブレムの原案が酷似するということが話題となりました。

 

 

 


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